豆腐を食べる

 タンパク質は大豆からとる。長生きしたければ、これは鉄則だ。

 肉を食べないとタンパク質がとれないように思っている人が多いが、それが間違いであることはすでに述べた。
 「畑の肉」といわれる大豆こそ、人間が摂取するにふさわしい、理想的タンパク源だ。

 タンパク質自体が肉よりも良質であるうえに、BSE問題などまったく無縁である。
 ダイオキシンや抗生物質、病原菌や発ガン物質といった、肉が抱える問題の一切を回避できる。
 そのうえ家計にもやさしい。牛や豚を殺さなくてすむから、動物にもやさしい。
 肉はパーティーの席で少量つつく程度にして、毎日の生活ではズバリ大豆を副食の中心にすえるべきだ。


 さてその大豆、いいところだらけのようではあるが、ただひとつ欠陥がある。
 料理するのがタイヘン。
 大豆はそのままでは食べられない。いちおうフライパンで焼けば食べられなくもないが、消化に悪い。
 煮豆にすればだいぶ食べやすくなるが、手間がかかる。6時間以上水に浸してから、圧力鍋で2時間調理しなければならない。それでもまだ完全に消化がよくなったとはいえない。
 そこで日本人は、昔から生活の知恵を使って大豆をさまざまな加工食品にしてきた。
 すなわち、豆腐、納豆、みそ、しょうゆがそれである。
 これで消化吸収力はグッとアップしている。そのうえ摂取するのに手間がない。

 さて、あとはここから、どれをメインの副食として選ぶかが問題だ。
 みそ、しょうゆは副食にはなりえないから除外すると、豆腐か、納豆かのいずれかになる。
 答えから言うと、豆腐が良い。
 これは、大豆製品のなかで最も良いというだけでなく、植物性タンパク質を補給するための世界最高の食品という意味である。
 納豆、みそ、しょうゆもいいのだが、腸への負担や、大豆自体の摂取効率を考えると、豆腐の右に出るものはない。
 今日から毎日、豆腐を食べるようにしよう。昼に半丁、夜に半丁、あわせて1日1丁が理想的だ。


 だいじなのは豆腐の選び方だ。
 豆腐を買うときは、とにかく原材料を見ることである。
 原材料に2つしか書いていなければ、その豆腐は味も品質も保証できる。
 その2つとは、「大豆、にがり」。
 これだけしか書いていないなら安心できる豆腐だ。
 「にがり」はいろんな書き方がされているので、注意が必要。
 塩化マグネシウム、塩化マグネシウム含有物、塩化カルシウムと書いてあれば、それは天然にがりなので安心だ。あるいは「凝固剤(にがり)」と書いてあるものもある。

 注意しなければならないのは、たんに「凝固剤」としか書いていない場合。これはアウト。天然にがりではなく、硫酸カルシウムやグルコノデルタラクトンを使用している。こんな豆腐は買ってはいけない。
 必ず原材料を見て、「大豆、にがり」の2つしか使っていない豆腐を買おう。


 ところが、この2つの原材料しか使っていない豆腐というのが、実は、なかなか売っていない。
 たいてい、もう1つ、よけいなものが付け加えてあるのだ。
 それが、「消泡剤」である。
 これが書いてあったら、もうアウトだ。それはもう豆腐ではない。
 消泡剤とは、豆腐を作る際に発生するアワを消すための薬品だ。
 薬品など入れずに、きちんと濾過すればよいのだが、それでは手間ひまがかかってしまう。さらに、同じ分量の大豆から作れる豆腐の量が半分になってしまうのだ。より安い豆腐を作るには、消泡剤を混入させるのがよいのである。

 しかしこんな豆腐は明らかに味が落ちる。いちど、消泡剤が入っていない豆腐と2つ並べて、塩だけかけて食べ比べてみるといい。消泡剤入りの豆腐は、味も素っ気もないのが分かるだろう。

 ところが、消費者がこの消泡剤入りを避ける傾向が出てきたため、メーカーも知恵をつけているのだ。
 ときどき、消泡剤と書かずに「グリセリン脂肪酸エステル」と書いていることがある。これは消泡剤のことなのだ。こう書いておけば、一般消費者には消泡剤とは分からない。
 こんな悪質な豆腐は、特に買ってはならない。
 もっとひどいものもある。コクを出すために、安い植物油脂を入れているものがあるのだ。こんなメーカーは、ヘルシーフードとしての豆腐を作っているという誇りも何もないのであろう。しかも「味が濃い、おいしい豆腐」などとうたって、消泡剤不使用豆腐なみの値段を吹っかけている場合が多い。論外だ。

 「大豆、にがり」。これしか使っていない豆腐を、いつも買い物をしているスーパーの中で探してみてほしい。一品くらいは置いてあるはずだ。


 ちなみに、こうした「よい豆腐」をどれだけ揃えているかで、そのスーパーが良いスーパーか、そうでないかが如実に分かってしまうのである。
 「大豆、にがり」しか書かれていない豆腐がたくさん置いてあれば、そのスーパーは食品の質にこだわった仕入れをしている、良心的な店といえる。

 ところが、置いてある豆腐が、みんな消泡剤入りというひどいスーパーも存在する。「売れればよかろう」精神で、豆腐以外でも粗悪な安物ばかり仕入れているということが分かる。
 こうして見ると、ひとくちにスーパーといっても中身はぜんぜん違うものだ。
 さっそく、あなたの町のスーパーを点検してみよう。そして、いいスーパーを見つけたら、多少遠くてもそこへ行くのだ。こうして消費者が供給者を変えねばならない時代に来ている。


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